はじめに
「急に息ができなくなって、心臓がバクバクして、目の前が真っ白になった」
「このまま死んでしまうんじゃないかって本気で思った」
…それは、パニック発作と呼ばれる症状かもしれません。
そして、それが繰り返される状態は「パニック障害」という診断になります。
パニック障害は、決して“気のせい”ではなく、**脳と身体の反応が引き起こす“本物の恐怖体験”**です。
精神科訪問看護ステーション「れむりあ」では、
この“説明できない不安と恐怖”に寄り添いながら、再び安心して日常生活が送れるよう、看護の支援を行っています。
今回は、パニック障害とは何か、そして訪問看護でどんな支援ができるのか、専門的かつわかりやすく解説します。
パニック障害とは?
パニック障害は、不安障害の一つで、「突然の激しい恐怖(パニック発作)」が繰り返される病気です。
主な症状(パニック発作)
- 突然の動悸・息苦しさ・めまい・発汗
- 「死ぬのでは」「気が狂うのでは」という強い恐怖
- 数分~10分程度でピークに達し、徐々におさまる
発作が過ぎ去った後も、
「また発作が起きたらどうしよう」という予期不安が強くなり、
やがて「外に出られない」「電車に乗れない」「ひとりでいられない」といった**広場恐怖(回避行動)**につながることもあります。
原因と背景
発症の原因は一つではなく、以下のような要因が絡み合っています。
- 強いストレスやトラウマ体験
- 自律神経の過敏さ(交感神経の過剰反応)
- 遺伝的な要素(家族に不安障害の既往)
- 脳内神経伝達物質(セロトニンなど)のアンバランス
「なぜ私が?」と悩む方も多いですが、
**誰にでも起こりうる心と身体の“誤作動”**と捉えることが重要です。
診断と治療
パニック障害は精神科・心療内科で診断されます。
心筋梗塞や甲状腺異常など身体疾患との鑑別も必要なため、
まずは医療機関での受診が大切です。
治療の柱は以下の2つ:
- 薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬のSSRIなど)
- 認知行動療法(CBT):発作や不安への対処を学ぶ心理療法
ただし、「薬に頼りたくない」「外出が怖くて通院できない」という方も多く、
そこで活躍するのが精神科訪問看護です。
れむりあの訪問看護でできること
✅ 1. 「安心の土台」を整える
パニック障害の根底にあるのは、「この場から逃げられないかもしれない」という安心感の欠如です。
れむりあでは、利用者様が
- 看護師の顔を見るだけでホッとする
- 何かあってもすぐ話せる
- 外出や通院の付き添いがあるから心強い
と感じられるよう、30分の訪問の中で「安心の場」を提供します。
✅ 2. 発作の記録と振り返り
「なんとなく怖かった」ではなく、
- どこで
- どんな状況で
- どんな体の反応があり
- どう対処できたか
を一緒に記録・振り返ります。
これにより、「パニック=制御不能」から、
「理解し、少しずつ対処できる」感覚へと変化が生まれます。
✅ 3. 呼吸法・セルフケアの練習
訪問中には以下のような具体的なセルフケアの練習も行います:
- 腹式呼吸・4-7-8呼吸法
- グラウンディング(五感を使った落ち着き法)
- 安心アイテムや安心ワードの設定
- フラッシュバック時の対応スキル
「ひとりで乗り越えられた経験」を積むことが、予期不安を和らげる鍵です。
✅ 4. 通院支援と薬の相談
れむりあでは、週3回ご利用の方に対して、月1回・3時間以内の受診同行サービスを提供しています。
- 医師との会話が不安
- 体調不良で外出できない
- 診察内容を忘れてしまう
そんな時は、看護師が付き添い、メモ・質問代行・服薬確認などの支援を行います。
また、薬の副作用や効果についての不安も、
ご本人に代わって医師に伝えたり、わかりやすく説明する「橋渡し役」として機能します。
✅ 5. ご家族へのサポート
パニック障害は周囲に誤解されやすく、
「甘えてるだけじゃない?」「外に出れば治るよ」などの言葉が、
かえって本人を追い詰めてしまうことがあります。
れむりあでは、ご家族にも
- パニック障害の仕組みと正しい理解
- 声かけの工夫
- 距離感のとり方(過干渉・無関心のバランス)
- ご家族自身のストレスケア
についても、時間をかけて伝えていきます。
よくある質問(Q&A)
Q. 発作のとき、救急車を呼ぶべき?
A. 命に関わる病気との鑑別が済んでいれば、パニック発作自体は数分で治まります。慌てず呼吸法などで対応しましょう。
Q. 急に発作がきたら、どうすればいい?
A. 「逃げてもいい」「座って休んでもいい」と自分にOKを出すこと。看護師と事前に“緊急時の対応シート”を作っておくと安心です。
Q. 治る病気ですか?
A. はい。適切な治療と環境が整えば、多くの方が社会生活に復帰しています。
訪問の現場から:Bさんのケース(40代・男性)
Bさんは、通勤電車内で初めて発作を起こし、以後「電車恐怖」「外出困難」になりました。
自宅療養を続ける中、精神科訪問看護を導入。
初回は看護師が玄関先で話すだけでしたが、徐々に
- 呼吸法の練習
- コンビニまでの外出練習
- 通院同行で診察への不安軽減
- 家族への説明支援
などを通じて、現在は週2回、自力で外出できるように。
「ひとりじゃ無理だった。でも、少しずつ動けるようになった」と話してくれました。
まとめ
パニック障害は、見た目にはわかりにくくても、本人にとっては命の危機を感じるほどの恐怖体験です。
訪問看護では、「ただ家に行く」のではなく、
その人にとっての“避難所”であり、“安心できる場所”となるよう、
れむりあは真心をこめて関わっていきます。


