疾患別で知る精神科訪問看護

「自分でもやりすぎとわかってるのに…」|強迫性障害(OCD)と訪問看護の寄り添い方

疾患別で知る精神科訪問看護

はじめに

ドアの鍵を何度も確認する。
手を何十回も洗わないと気が済まない。
「自分のせいで何か悪いことが起こるかも」と頭から離れない…。

こうした行動や思考は、単なる“心配性”ではなく、「強迫性障害(OCD)」という病気かもしれません。
そしてこの病は、本人も「おかしい」と自覚しながらもやめられないという、強い苦しみを伴います。

今回は、精神科訪問看護ステーション「れむりあ」が実際にかかわる中での経験をもとに、
強迫性障害に対する理解と訪問看護の支援のあり方について、やさしく・実践的にお伝えします。


強迫性障害とは?

強迫性障害(Obsessive-Compulsive Disorder:OCD)は、不安障害の一種です。

主に以下の2つの症状で構成されます:

① 強迫観念(Obsessions)

→ 自分の意思に反して頭に浮かんでしまう、不快で不安な考えやイメージ
(例:「汚れているかもしれない」「誰かを傷つけたかもしれない」)

② 強迫行為(Compulsions)

→ その不安を打ち消すために繰り返す行動や儀式
(例:手洗い、確認行動、数を数える、特定の順序で物事を行う)

この2つが組み合わさることで、日常生活に深刻な支障をきたします。


よくある強迫行為の例

  • 何度も鍵を確認しないと外出できない
  • 手が汚れている気がして1時間以上洗ってしまう
  • 自分の行動が原因で他人が死ぬのではと不安になる
  • 頭の中で特定の言葉を繰り返さないと落ち着かない
  • 左右対称や数字に異常なこだわりがある

どの例も、「やめたくても、やめられない」ことが特徴です。
そして、「こんな自分はおかしい」と思いながらも、止められない自責感と戦っている方が多いのです。


発症の背景と影響

原因は明確ではありませんが、遺伝的要因・脳内物質(セロトニン)バランスの乱れ・環境的ストレスなどが複合して発症すると考えられています。

生活への影響は深刻で、

  • 外出が困難になる
  • 学校や仕事を継続できない
  • 家族関係が悪化する(巻き込み・強要など)
  • 本人の自己肯定感が極端に低下する

など、長期的な生活障害につながることも珍しくありません。


本人が抱える“見えない葛藤”

強迫性障害の苦しさは、外から見ると分かりにくいものです。
しかし本人の内側では、次のような葛藤が渦巻いています。

  • 「わかっている。でもやらないと不安で壊れそう」
  • 「周囲の人にも迷惑をかけている。でも止められない」
  • 「気にしないようにしても、勝手に浮かんでくる」
  • 「薬で治るの?一生このままなの?」

その苦しみは、“脳の誤作動”であるにもかかわらず、「性格の問題」と誤解されやすいのも、この病気の辛さです。


れむりあ訪問看護のかかわり方

当ステーション「れむりあ」では、強迫性障害の利用者様に対し、以下のような視点と支援を大切にしています。


✅ 1. 「共に観察する」スタンス

強迫行為を止めるよう指示したり、否定したりするのではなく、まずは

  • 「どんな時に不安になるのか」
  • 「どんな行為がどれくらいの頻度で起きているのか」
  • 「どれくらい本人が困っているのか」

一緒に観察・記録することから始めます。

本人が自分の状態を客観的に把握できるようになることが、回復への第一歩です。


✅ 2. 焦らず“1ミリずつ”を共有する

強迫性障害の支援では、「少しずつ慣れる(曝露反応妨害法)」が有効とされていますが、
実際の現場では「今日は石けんの量を1プッシュ減らせた」など、極めて小さな変化の積み重ねです。

れむりあの看護師は、たとえば

  • 「昨日より1分早く洗い終わった」
  • 「一度、確認を我慢できた」
  • 「朝の気分を“普通”と表現できた」

などの“小さな前進”を見逃さず、共に喜びます。


✅ 3. 薬物療法と心理療法の橋渡し

強迫性障害には、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)などの薬物療法が効果的とされます。

しかし、薬に対する抵抗感が強い方も多いため、

  • 「副作用について不安なこと」
  • 「飲んでも変化がないように思えること」
  • 「飲んでいる意味が分からない」

といった相談にも丁寧に応じ、医師と連携して情報の橋渡しを行います。

また、心理士によるCBT(認知行動療法)と併用されている方には、
「セッションで話したことを、訪問で一緒に復習する」支援も行います。


✅ 4. ご家族の“巻き込み”への対応

強迫性障害では、ご家族が行為に巻き込まれるケースも多く、

  • 「これ洗って」「確認して」と何度も頼まれる
  • 「やらないと本人がパニックになるから、やってしまう」

という状況が慢性化し、家族も疲弊してしまうことがあります。

れむりあでは、ご家族に対しても

  • 「境界線を守ることの重要性」
  • 「やってしまった後の自責を手放すこと」
  • 「看護師に一時的に“受け皿”を任せること」

など、現実的な関わり方の工夫を一緒に考える支援を提供しています。


Q&A よくある疑問に答えます

Q. 自分でもおかしいとわかっているのに止められないのは、どうして?
→ 強迫性障害は“脳の誤作動”です。意志の問題ではありません。

Q. どう接したらいいのか分からない…
→ 否定せず、「それで困っているんですね」と共感することが第一歩です。

Q. 訪問看護では何をしてくれるの?
→ 行動観察、安心の土台づくり、医療・心理支援との橋渡し、生活の再構築など、30分の訪問にできる限りの支援を詰め込んでいます。


訪問の現場から:Aさんのケース(30代・女性)

Aさんは、「手を洗わずにはいられない」という症状から、
1日のほとんどを洗面所で過ごす生活になっていました。

訪問を始めた当初は、私たち看護師が部屋に入るだけでも手を洗い直すほど敏感でした。
しかし、定期訪問の中で少しずつ、

  • 「その場では洗わず、あとで洗う」ことにチャレンジ
  • 不安な気持ちを言葉で伝えられるようになる
  • 外出を意識し、手袋でのコンビニ買い物を実行

と、小さな変化が積み重なり、現在は週に一度、近所のスーパーに行けるようになりました。


まとめ

強迫性障害の支援に“近道”はありません。
でも、「そばにいてくれる人がいる」「見てくれている人がいる」という実感が、
本人の“回復する力”を目覚めさせていきます。

精神科訪問看護「れむりあ」は、
その方のペースで、「不安の支配」から「自分自身の選択」へと歩めるよう、そっと後押しし続けます。

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