はじめに
「訪問看護って、何をしているの?」と聞かれると、
医療的なケアや服薬確認をイメージされる方が多いかもしれません。
ですが、精神科に特化した訪問看護では、
“遊ぶように寄り添う”という支援の形が、何よりも大切にされています。
今回は、精神科訪問看護ステーション「れむりあ」が実践する、
“ただの医療サービス”にとどまらない、人に寄り添うための時間の使い方についてお話しします。
「遊ぶように寄り添う」ってどういう意味?
この言葉は、れむりあの理念そのものです。
精神疾患や発達障害、知的障害を抱える方々にとって、
医療や支援はときに“管理されること”と感じられることがあります。
そんなとき、「また来てほしい」「この人といると楽しい」
と思ってもらえるような、“心の栄養”になる関わり方が必要です。
● 支援の目的は「行動の変化」ではなく「心の安心」
れむりあでは、「どうすれば薬をちゃんと飲ませられるか」ではなく、
**「どうすれば、その人が“安心して生きられるか”」**を第一に考えます。
「遊ぶように寄り添う」という姿勢には、
支援する側の押し付けや指示を手放す勇気が込められています。
れむりあの訪問:30分で大切にしていること
れむりあの訪問時間は、1回あたり30分。
この限られた時間の中で、次のようなことを意識して行っています。
1. 会話より“関係性”を育てる
- 今日は何を話すか、よりも
- 今日の“空気”をどう整えるか
を大切にしています。
何気ない会話、沈黙、アイコンタクト、そして笑顔。
こうしたささいなやり取りこそが、心の回復の第一歩になります。
2. 遊びや活動を“媒介”にする
れむりあのスタッフは、必要に応じて以下のような関わりを行っています。
- トランプやUNOなどのカードゲーム
- 簡単なお絵かき、ぬり絵、折り紙
- 一緒にテレビを観る
- 音楽を聴きながらおしゃべりする
- 散歩しながら今日の天気の話をする
こうした“遊び”の中には、緊張をほぐす力があります。
会話に苦手意識がある方でも、「遊びながら」なら自然と心が開いていきます。
3. コントロールしない。選んでもらう
「今日は、何をして過ごしたいですか?」
「お話する?それともゲームする?」
このように、選択肢を提示することで、
“自分で選べた”という感覚を得てもらいます。
これは、自己肯定感を回復させる大事な要素です。
実際の事例:ゲームを通じて信頼関係を築いたAさんの場合
Aさん(30代・男性)は統合失調症の診断があり、
当初は誰とも話をせず、訪問中も無言で座っていることがほとんどでした。
スタッフは無理に会話を求めず、
まずは「一緒に座る」「一緒にテレビを見る」だけの時間を重ねました。
ある日、トランプを持参し、「一人でもできるゲームだよ」と差し出すと、
Aさんは静かにカードを手に取りました。
それから数回の訪問で、Aさんの方から「やろう」と言うようになり、
次第にゲーム中にぽつりぽつりと話し始めるようになったのです。
いまでは、「今日も来てくれてありがとう」と笑って見送ってくれます。
なぜ「遊び」が大切なのか?3つの理由
理由①:病気ではなく“人”として関わるため
精神科訪問看護は「治療」でもありますが、
同時に「人と人の関係づくり」でもあります。
遊びや活動は、“患者”という枠を越えた人間的な交流を可能にします。
理由②:五感を通じて安心を届けられる
- カードを混ぜる音
- 塗り絵の色彩
- 散歩中の風の音や匂い
これらはすべて、感情の安定に影響を与える要素です。
五感を刺激する「楽しい体験」こそが、回復を支える鍵になるのです。
理由③:自己表現のきっかけになる
言葉で自分の気持ちを伝えにくい方でも、
遊びや創作活動を通して、“自分”を少しずつ表現できるようになります。
その過程が、「自分はここにいていい」という安心感につながっていきます。
支援者・ご家族へ伝えたいこと
「ただ遊んでるだけに見えるけど…それって支援なの?」
そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。
けれど、
“ただ一緒に笑う時間”が、その人の人生を支えていることもあるのです。
・言葉ではないコミュニケーション
・評価されない安心感
・無理に頑張らなくていい居場所
そうした要素が、れむりあの「遊ぶように寄り添う」支援には詰まっています。
訪問看護の制度としての対応
れむりあの訪問看護は、
- 1回30分の訪問を基本とし
- 週1〜3回の利用者に応じた個別支援を行っています。
- 週3回の利用者には、月1回(3時間以内)の受診同行サービスも対応しています。
制度の枠組みの中でも、その人らしさを大切にした支援が可能であることを、れむりあは実証し続けています。
おわりに
精神科訪問看護は、“病気を治すための時間”ではありません。
その人が「生きていていい」と思えるような時間を、静かに育てていく支援です。
れむりあでは、今日も誰かの部屋で、
カードを切ったり、お茶を飲んだり、小さなゲームを楽しんだりしています。
それは、決して“暇つぶし”ではありません。
その中にこそ、人と人がつながる力があるのです。
「今日は、何して過ごそうか?」
そんな言葉が、生きる力を育てる入口になる。
れむりあの「遊ぶように寄り添う」訪問看護は、
今日もその一歩を、30分ずつ積み重ねています。

