はじめに
「本人が“訪問看護は必要ない”って言ってるんです…」
「来られるのが嫌だって。無理に続けさせてもいいのか分からない」
これは精神科訪問看護の現場で、
ご家族・福祉職・医療者の方からもっとも多く聞かれる悩みのひとつです。
訪問看護の価値は理解していても、**ご本人の“拒否的な態度”**があると、
「無理やり続けても逆効果なのでは?」と感じてしまうもの。
でも実は、その「必要ない」という言葉の裏には、
“支援を拒んでいるわけではない”可能性が隠れていることも多いのです。
この記事では、精神科訪問看護における“拒否”との向き合い方を、
れむりあの実例や支援スタンスを交えてお伝えしていきます。
「必要ない」は“本心”とは限らない
精神疾患や発達障害をもつ方の中には、
- 対人不安が強い
- 自尊心が傷つきやすい
- 支援を“監視や指示”と感じやすい
- 「助けられる自分」がつらい
といった、複雑な心情の中で「いらない」と言ってしまうことがあります。
💬 よくある本人の言葉と、その裏側にある想い(れむりあ現場より)
| ご本人の言葉 | 本当の気持ち(可能性) |
|---|---|
| 「来なくていいです」 | 「本当に信頼していいか、まだ分からない」 |
| 「もう元気だから大丈夫」 | 「もう関わられるのがつらい、逃げたい」 |
| 「医者と話せば十分」 | 「他人に弱い自分を見せたくない」 |
| 「自分のことは自分でやれる」 | 「期待されるのが怖い」「裏切られたくない」 |
このように、「拒否」に見える言動は、
“信頼したいけど怖い”という葛藤の現れであることが多いのです。
れむりあが大切にしているスタンス:「無理に近づかず、扉を開けておく」
れむりあでは、拒否があっても、次のような姿勢で関わり続けています。
① まず「否定しない」
- 「いらない」と言われても、「そう感じるんですね」と受け止めます
- 無理に説得したり、追い詰めたりしません
- “あなたの気持ちは尊重しますよ”という態度を大切にします
② 「断られても来る」ことを続けてみる
- 最初は玄関先での数分だけでもOK
- 「何かあったら連絡くださいね」だけ伝えて帰る
- とにかく、**“安全な存在として顔を覚えてもらう”**ことから始めます
🚪「部屋のドアは開けなくても、“心の扉”にノックは届いている」
これは、拒否が強い方への関わりでよく実感される言葉です。
③ 時には“来ない選択”も戦略
- 状態やタイミングによっては、数回スキップすることも有効
- ご本人に「空白」を与えることで、逆に「来ないの?」と思わせる働きかけに
- ただし、情報共有とタイミング管理が必要(関係機関と連携)
実例:強い拒否から始まったCさんの場合
Cさん(20代男性)は、統合失調症の診断を受けたばかりで、
「うるさい、勝手に来るな」と初回訪問時に怒鳴られ、スタッフは玄関から退散。
しかし、それでもれむりあでは:
- 「また来ますね」と静かに伝え、無理に話しかけなかった
- 次回訪問では、玄関先に“メモだけ”を置いて帰る
- それを数回続けたところ、ある日ふと「…少しなら話すよ」と言葉が返ってきた
現在では、週2回の訪問を受け入れ、リビングで一緒にお茶を飲むほどに関係が構築されています。
拒否に向き合うときの“心得”3つ
✔ 1. 拒否は“あなた個人”へのものではない
傷つくこともあるかもしれませんが、
それは支援者個人を拒絶しているのではなく、「支援されること自体」に対する防衛反応です。
✔ 2. 「関わる」よりも「離れすぎない」
すべてを解決しようとせず、
“関係を切らない”という姿勢を保ち続けることが、一番の支援になることがあります。
✔ 3. 支援チーム全体で“揺れ”を支える
拒否の出方は、日によって変わります。
れむりあでは、複数のスタッフが情報を共有しながら対応しており、
関係性がうまくいかない時には、別スタッフが担当する柔軟さも大切にしています。
ご家族・支援者の方へ伝えたいこと
「本人が拒否してるから仕方ない」と、支援をゼロにしてしまうと、
そのまま孤立し、再発・悪化のリスクが高まることがあります。
- あえて“ゆるくつながる”
- 定期訪問は続けず、月に1回だけ顔を見せる形でもOK
- 支援チームが“関係を切らない”姿勢を見せることが大切です
拒否の言葉の裏には、「どうせわかってもらえない」というあきらめや、「どうせまた離れていく」という悲しみが隠れている場合もあります。
よくある質問(Q&A)
Q. 本人が怒って「来るな!」と言ったら、どうすればいい?
→ 一旦距離を取ることもありますが、「支援が必要だと感じたら、また来ても大丈夫」と伝え、扉を閉じきらないようにします。
Q. ご家族が訪問をやめたいと言っている場合は?
→ ご家族とも丁寧に話し合い、必要であれば「最低限の見守り訪問」など柔軟な形で支援を継続します。
Q. 拒否が続いても契約は維持できますか?
→ 状況にもよりますが、支援計画を調整しながら、必要性があれば継続可能です(医師の判断や制度の範囲内で)。
おわりに
「来なくていい」と言われたときこそ、
その人の“本当の声”に耳を傾けるチャンスです。
訪問看護は、押しかけるものでも、説得するものでもありません。
ただ、そっと扉の前に立ち続ける。
それが、精神科訪問看護の「静かで力強い支援」です。
れむりあは、どんなに拒否が強くても、
「この人なら受け入れられるかもしれない」と感じる瞬間が訪れるまで、
その人のペースで、心の距離を測りながら寄り添い続けます。

