疾患別で知る精神科訪問看護

「空気は読めるのに、うまく伝わらない」|ASD(自閉スペクトラム症)と訪問看護のかかわり方

疾患別で知る精神科訪問看護

はじめに

「話しかけられるとパニックになる」
「一つの言葉にずっと引っかかってしまう」
「周囲には“普通”に見えるのに、毎日が生きづらい」

このような感覚を抱えている方の中に、「ASD(自閉スペクトラム症)」の傾向を持つ方がいます。

発達障害のひとつとして知られるASDは、見た目では分かりにくいために誤解されやすく、
その生きづらさを「本人の努力不足」とされてしまうことも少なくありません。

この記事では、ASDの基本的な理解から、訪問看護「れむりあ」がどのように寄り添っているかをわかりやすくご紹介します。


ASDとは?

ASD(Autism Spectrum Disorder/自閉スペクトラム症)は、発達障害の一つで、
コミュニケーションの難しさ・こだわり・感覚の過敏さなどが見られる神経発達症です。

以前は「自閉症」「アスペルガー症候群」などと分類されていましたが、現在では**“連続した特性のグラデーション”として「スペクトラム(連続体)」**と捉えられています。

つまり、一人ひとり特性の現れ方が異なり、画一的な支援は難しいということです。


主な特徴

① 対人関係・コミュニケーションの難しさ

  • 雑談やあいまいな表現が苦手
  • 表情や空気から感情を読み取るのが難しい
  • 会話のキャッチボールが続かない
  • “適度な距離感”がつかめず、孤立やトラブルになりやすい

② 独自のこだわり

  • 決まったルールや習慣が崩れると混乱する
  • 興味の幅が狭く、深く集中する(特定ジャンルの知識が豊富なケースも)
  • 数字や並び順に強いこだわりがあることも

③ 感覚の過敏・鈍感

  • 音、光、におい、肌の感触などに強い敏感さ(または逆に鈍感)
  • 着られる服や食べられるものが極端に限られてしまう
  • 人混みや蛍光灯の音でパニックを起こすことも

「普通に見えるのに困っている」という二重の苦しさ

ASDの方は、知的な遅れがない場合も多く、周囲からは「ちょっと不思議な人」として見られるだけだったり、
逆に「ちゃんとしているのに、なぜあの人だけうまくできないの?」と責められることもあります。

このような誤解が続くと、

  • 自己否定感が強くなる
  • 孤独から抑うつ状態に陥る
  • 不安障害、強迫症状、パニックなど二次障害を引き起こす

といった深刻な影響を及ぼします。


訪問看護「れむりあ」ができること

れむりあでは、ASDの方に対して以下のような支援を大切にしています。


✅ 1. その人の「安心できる世界観」を尊重する

ASDの方にとって、「自分の世界」が大切な安全地帯です。
他者の都合でその世界を否定されると、大きなストレスや混乱が生じます。

れむりあの訪問では、その方が安心できるルールや習慣、言葉の使い方を尊重し、
まずは**“自分らしくいられる場”**を築くことからスタートします。


✅ 2. コミュニケーションの形を合わせる

  • 口頭ではなく、文字や図を使った伝達
  • 曖昧な表現(「そのうち」「様子を見て」)を避ける
  • 「これとこれは、どう違うのか?」という問いに明確に応える

といった、わかりやすく明確なコミュニケーションを心がけています。

また、話す内容だけでなく、表情や声のトーン、間の取り方にも注意を払い、
安心してやりとりができるような空気づくりを大切にしています。


✅ 3. 生活リズムと“予測可能性”の支援

ASDの方は、予測できないことや予定変更に強い不安を感じやすい傾向があります。

訪問時には、

  • 一週間の予定を可視化(カレンダーやタイムスケジュール)
  • 「今週は何をするか?」を事前に共有
  • 不測の事態に備えた“切り替え方法”の練習

などを通じて、“今、自分は何をすればよいかが明確になる”支援を行っています。


✅ 4. 二次障害への早期対応と予防

れむりあでは、うつ症状や不安障害、パニック発作などの二次障害が見られた場合、
医師やご家族、支援機関と連携を取りながら、以下のような対応を行っています。

  • 感情の揺れを「見える化」するワーク
  • “嫌だったこと”の整理と対策づくり
  • 苦手な対人場面のロールプレイ練習
  • 投薬状況の確認や主治医との連携

✅ 5. ご家族・周囲への理解促進

「本人の努力不足ではないこと」
「無理に変えようとすると、逆に悪化すること」
「“できない”ことには理由があること」

れむりあでは、ご家族や関係機関にもASDの理解を深めてもらえるよう、
必要に応じて訪問看護の場でのフィードバックや勉強会なども提案しています。


事例紹介:Yさん(30代・女性)

Yさんは軽度のASDと診断を受けており、日常会話は問題ないものの、職場や家族との人間関係で深いストレスを抱えていました。

訪問当初は、

「自分が何を間違えているのか分からない」
「何をどう伝えても誤解される」

という悩みを繰り返し訴えられていました。

訪問では以下のような支援を行い、現在は在宅ワークを開始できるまでに回復されています。

  • 感情と出来事を記録する「感情日記」
  • 言葉の選び方と相手の反応の読み取り練習
  • 家族との“伝え方”トレーニング
  • リラックスできる環境の再構築

よくある質問(Q&A)

Q. ASDの人は他人の気持ちが分からないの?
→ 感情が理解できないわけではなく、「どう表現すればよいか」が難しいことが多いです。

Q. 社会生活はできるのですか?
→ 支援や環境調整次第で、十分に自立した生活や就労も可能です。

Q. 訪問看護は具体的に何をしてくれるの?
→ 日々のスケジュール支援、会話の練習、感情の整理、主治医との連携など、
その方に合った“安心できる生活のサポート”を行います。


まとめ

ASD(自閉スペクトラム症)は、「理解されにくいけれど、本当はとても繊細な特性」です。
れむりあでは、その人が持つこだわりや不安を“否定せず”、
一緒に「安心して暮らせる環境」を作ることを何よりも大切にしています。

無理に“普通”に合わせなくていい。
自分のペースで、自分らしく。
そのための支援を、これからも一緒に続けていきます。

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精神科訪問看護ステーションれむりあ 【伊勢崎 太田 桐生 みどり 前橋 高崎 玉村町】
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