はじめに
統合失調症という言葉を聞いたことがあっても、「実際どんな症状があるの?」「どう接したらいいの?」と戸惑う方も多いのではないでしょうか。
精神科訪問看護の現場では、統合失調症の方と日常的に関わる機会が多くあります。
しかし、病気への理解がないまま接してしまうと、ご本人との信頼関係が築けず、支援がうまくいかないことも少なくありません。
この記事では、統合失調症という疾患の基本的な理解から、関わり方のコツ、そして訪問看護での支援の実際まで、専門的かつ実践的に解説します。
福祉施設職員の方やご家族、支援者にとっての“ヒント”になることを願っています。
統合失調症とは?
統合失調症は、現実と自分の認識との区別がつきにくくなる精神疾患です。
主な症状は「幻覚」「妄想」「思考の混乱」などがあります。
発症のピークは10代後半から30代に多く、日本ではおよそ100人に1人がかかると言われています。
決して「特別な人がなる病気」ではなく、誰にでも起こりうる疾患です。
主な症状の分類と特徴
統合失調症は、大きく以下の3つの症状群に分けられます。
① 陽性症状(プラスの症状)
- 幻聴(例:「誰かに悪口を言われている」と感じる声が聞こえる)
- 妄想(例:「監視されている」「家族が自分を殺そうとしている」など)
- 思考の混乱(話がまとまらず、支離滅裂になる)
👉 ご本人にとっては**「事実」としてリアルに感じられている**ため、否定すると強い不安や怒りを引き起こすことがあります。
② 陰性症状(マイナスの症状)
- 感情が乏しくなる
- 話さなくなる・関心がなくなる
- 自発的に動けなくなる(アパシー)
👉 「やる気がない」と誤解されがちですが、**脳の働きにより“意欲そのものが失われている”**状態です。
③ 認知機能の障害
- 計画を立てるのが難しい
- 注意が散漫になる
- 記憶力の低下(短期記憶の保持が難しい)
👉 社会生活の中で“ミス”や“混乱”が増えるため、周囲の理解がないと孤立しがちです。
統合失調症の原因と治療
原因は完全には解明されていませんが、脳内の神経伝達物質(特にドーパミン)の働きの乱れが関係していると考えられています。
また、遺伝的な要因と、環境的ストレスが重なって発症すると言われています。
主な治療法は?
- 薬物療法(抗精神病薬)
症状のコントロールに最も有効です。ただし副作用への対応が必要です。 - 精神療法・認知行動療法
自分の思考パターンや行動を見直し、再発予防を図る - 生活支援・リハビリテーション
作業所や就労支援、訪問看護などを通じて、社会復帰を支援します。
ご本人と接するときに大切なこと
支援者がまず知っておくべきことは、
**「統合失調症は“本人のせい”ではなく、“病気のせい”で起きていること」**です。
1. 幻聴や妄想は否定しない
「そんなことあるわけないでしょ!」と否定すると、
「この人は自分のことを分かってくれない」と感じ、信頼関係を壊すきっかけになります。
➡ 「怖かったね」「不安だったんだね」と“気持ちに寄り添う”対応が重要です。
2. 指示・命令ではなく、選択肢を与える
「こうしなさい」ではなく、
「今、◯◯と△△、どっちが良いと思いますか?」と聞くことで、主体性を保ちながら支援できます。
3. 焦らせない・否定しない・共感する
- ペースはその人の“今”に合わせる
- 「あなたはこう思ってるんだね」と認めることが、安定につながる
精神科訪問看護での支援の実際(れむりあの現場より)
れむりあでは、統合失調症の方に対して以下のような訪問支援を行っています。
✅ 服薬管理と体調確認
- お薬カレンダーやピルケースの使用を一緒に行い、服薬の習慣化を支援
- 表情・会話・日記などから体調変化を観察
- 副作用が強い場合は主治医への情報提供も
✅ 日常生活への支援
- 朝の声かけ、散歩、買い物同行などを通じて「できること」の維持
- 昼夜逆転や引きこもり傾向への“自然なリズムづくり”の介入
- 掃除や食事の習慣づけを一緒に行うこともあります
✅ 精神的な安定のサポート
- 妄想が強い時の“安心できる空間づくり”
- 家族との関係が難しい方へのクッション的役割
- 変化があった際の「安全な報告先」として存在する
✅ 家族への支援
- ご家族のストレスケア(話を聴く・対応方法の相談など)
- 病気への理解を深めてもらうための情報提供
- 必要に応じて医療機関や福祉サービスとの橋渡し
訪問の中で大切にしていること
れむりあの訪問時間は1回あたり30分です。
短い時間の中でも、その方の心に“安心感”が残るよう、以下のことを大切にしています:
- 声のトーン、表情、距離感を丁寧に
- 「あなたを責めない」「あなたを理解しようとする」姿勢
- ご本人の「言葉にしにくいSOS」を察知する感性
支援者の“無力感”も自然なこと
統合失調症の方と関わる中で、支援者自身が「何もできていない気がする…」と感じることもあります。
でも、それはご本人にとって**「信頼できる存在が毎週来てくれる」**というだけで、すでに大きな支えになっています。
「ただ来てくれてありがとう」
「また来てね」
そんな一言の中に、支援の価値は確かにあります。
おわりに
統合失調症は、理解されにくい病気です。
けれど、適切な支援と関わりがあれば、地域での生活を続けていくことは十分に可能です。
精神科訪問看護は、その人の生活に寄り添い、
病気だけでなく“人生そのもの”を支える支援です。
れむりあでは、疾患を「治す」ことよりも、
「人と人が関係を結びなおす」ことを大切にした訪問を行っています。
ご本人の回復力を信じながら、これからもそっと寄り添っていきます。

